土地選びのプロセスや考え方について示します。
自分の拠点になる土地ですので、慎重には慎重を重ねて検討しましょう。土地選びに対し、”慎重になりすぎる”ということはありません。
不動産屋やハウスメーカー営業マンの視点でなく、ユーザー視点で具体的かつ有益な情報を提供します。是非、参考にしてください。
1.土地の広さ
家を建てる土地について、実際に土地を購入して家を建てた自身の経験から、これから土地を探して購入する際の注意点をあげていきます。
希望条件の明確化
まずは、どの程度の広さの土地が必要でしょうか?
当然ながらユーザー毎に希望条件は異なるはずです。
なぜなら各家庭で家族構成、ペットの有無、趣味へのこだわり等で、必要な土地の広さは変わってくるためです。
一例を挙げると以下のようです。
- 子供をのびのび遊ばせるだけのスペースが欲しい。
- 庭で知り合いを呼んでバーベキューできる広さが欲しい。
- 趣味のゴルフの練習ができる広さにしたい。
- 趣味のガーデニングができるような庭が欲しい。
- 将来子供と同居して増築できるように、土地は広く持っておきたい。
- 犬を走らせ回りたいのである程度のスペースがほしい。
- 一人一台車が必要になるので、広い駐車スペースが必要だ。
等です。
もちろん広い土地の方が狭いよりも解放感もあって、快適な暮らしができそうに思えます。
しかし、多くの人にとって不動産購入資金は有限のはずですので、懐具合と相談しながら何を優先させるのかをまずは決めましょう。
トータルの予算から家と土地の費用の配分を決めましょう。
必要なスペースは?
特別な理由なく、漠然と “広い庭のある土地に家を建てたい” というのなら、よく考えた方がいいです。
土地が広ければ手入れも大変になります。何より必要のない分の土地まで購入しなくてはならなくなり、家に割り当てる費用が減ってしまいます。
良く見かけるのは土地50が坪前後で、そこにあった建蔽率と実績から、家は30坪の建坪の家を建てるのがよくあるパターンです。
この広さは実際のところ、例えば4人家族で生活をする上で無駄がなく、費用的にもロスが小なめのバランスのよい家ではないかと個人的には思います。
車が2台分の駐車スペース+車2台弱分くらいの庭スペースといった広さになります。
ただ人によっては、この広さだと、少し広めの庭をイメージしている人には狭く感じ、不満がでる可能性はあります。
なので、“ガーデニングで菜園を作りたい” とか、“庭で友人とパーティーをしたい” といった希望の優先順位が高いなら、土地面積はそれなりに必要になるということです。
また土地の希望条件が広めの土地だと、予算が合わなくなってしまったということになりかねません。
その場合は、限られた資金に対して見合った価格の土地を探すこととなります。
土地面積を小さくするか、または駅や町から少し離れた郊外の土地を探すことになるでしょう。
駅から遠くなると当然土地の値段は安くなります。
“購入費用”と“交通や生活の利便性”はトレードオフの関係にあるので、この課題をどうやって落としどころを探すか、という判断に迫られることになるはずです。
何度も言いますが、自分の希望条件が ”何であるか” を明確にしておきましょう。
土地に対する価値とは
実際に土地を探しはじめると、思ったような良い条件の土地になかなか出会えません。
その場合、”自分にとって価値がある条件を満たす” ということに絞って土地探しをするとハードルは下がるかもしれません。
私の場合、土地を決めるに至るまでに、分譲地以外で価格が安く良い土地がないかどうか、不動産屋やハウスメーカーの紹介物件を結構探しましたが、なかなかいい物件がありませんでした。
紹介された物件を参考として挙げると、以下のような物件を紹介されました。
- 工場のすぐ横の土地
- 線路のすぐ近くの土地
- 狭い通路の住宅密集地の一角。
- 廃品処理店の横の土地。
- スーパーのすぐ裏の土地
- ガソリンスタンドの裏の土地
- 山の中にありの崖を背中にしょっている土地
等です。
どれも自分が心身ともに健康に過ごせるかを考えると、敬遠せざるを得ない土地でした。
価格は確かに安めでしたが、よく考えた末、候補から外しました。
人によっては、資金や時期的に急いでいるなどの事情のある場合もあると思います。
完全に条件を満たす土地が何年たっても出てこない可能性もあうので、”妥協できる線”で決めることも大事かもしれません。
最後は自分で判断しなくてはいけないところですので、“自分の希望は何か”、“優先順位の高い項目は何か” を明確にして、自分自身の判断や決定にブレがでないようにしましょう。
いずれにしても土地購入後に後悔だけはしないようにしましょう。
2.土地の条件
坪単位で数十万以上の費用を払う土地に対し、もう一度自分たちが何を目的に土地を購入するのかについてよく考えてみましょう。
家を建てるためのスペースというのは当然にしろ、通常は自分たちが快適に暮らすために新しく家を建てるのですから、何よりも心身ともに安全安心かつ健やかに便利に暮らせる土地である必要があるのではないでしょうか?
私の場合は、立地も安全性もよい条件の いわゆる “一等地” をハウスメーカーが分譲していたので、そこに決めましたが、割高にはなりました。
ただ自分たちの希望条件を満たしていることを考えると、自分たちが納得する決断をできました。後悔はなかったです。
ここで改めて、土地選びで重要になってくる立地と安全性について考えてみましょう
以下の内容をしっかり押さえて、後悔のない決断をしてください。
立地
- 病院や学校、郵便局やスーパーが近所にあるか。
- 駅やバス停等の公共交通網はあるか。
- 交通量の多い道路からある程度の距離があるか。
安全か
- 地震や津波といった自然災害の影響を受けにくいか。
地盤
- 地盤は宅地として強固な土地か。地盤沈下や液状化現象を起こしやすい地質でないか。
日当たり
- すぐ隣に大きな建物がある場合など、問題のない日照を確保できそうか。
- ソーラー発電を考えている場合、日当たりが悪いと発電量に大きく影響あり。
分譲地
- 密集した土地ではないか。(隣の家との間隔が近すぎないか)
- 区画を選ぶ際、自分の希望の区画を選べるか。
ご近所は
- 自分たちと同じような家族構成の世帯かどうか。
- 自治会等はきちんとしているか。
- 近所の雰囲気はどうか。
※実際に住み始めると、人付き合いが楽かどうかがいかに重要であるかに気づかされます。
高台か平地か
- 高台なら大雨でも雨水は下に流れるので、被害を受けにくい。
- 保険も水害について掛ける必要がなかったり、景色が良いなどの利点がある。
- 丘の上のような高台だと車の所有が前提となり、毎日の生活で坂の上り降りの徒歩での移動の場合には不便となるケースもある。
- 平地の場合、坂の上り降りはないが、大雨や万が一の津波など来た時に床上浸水等の可能性がある。
電柱
- 敷地の真横に電柱がある場合、大地震等で損壊、倒壊した場合、自分の家に被害が出る可能性もゼロではない。できるだけ電柱が敷地の近くにないほうがよい。
- 強風時の風切り音、電線に止まる鳥の群れの糞害もあり得ます。
位置(道路、景色)
- 土地の前の道路が狭くないか、車のすれ違いが楽に出来るスペースや道幅があるか。
- 毎日のことだとちょっとしたストレスになる可能性あり。
- 交通量の少ない道で空気はきれいか。
- 景色は良いか。(例えば窓から隣の家の壁しか見えない場合などは圧迫感があります。)
- 一部のハウスメーカーが扱っている鉄骨ユニット構造の家では、土地の前の道路にクレーンが入っていけず、建築工法的に家を建てられないという場合もある。
3.土地の探し方
土地は良い条件の土地ほど早く売れてしまいます。意外と土地を探している人は多いのです。
自分で動いて多くの情報を得れば好条件の土地購入のチャンスは増えるはずです。
不動産屋さん
不動産屋さんが単独で持っている未公開情報で、これから売りに出される土地の情報を得られる場合があります。
地元の評判のいい不動産屋さんの情報をチェックしましょう。
立地によっては、古い家付きの土地を購入するほうが良いかもしれません。
古い家は解体費用がかかりますが、その費用を差し引いても土地の価値を考えた上で判断を下すと良いでしょう。
ハウスメーカー提携の不動産屋さんの情報もチェックしましょう。
ハウスメーカーの分譲地
- ハウスメーカー自らが土地開発して分譲地としているのでハウスメーカーに情報を尋ねる。
- ハウスメーカーは売り出している土地の情報をたくさんもっているので地盤や、立地などの情報収集が楽。
- 隣の土地の地盤調査結果も内緒で見せてくれることもある。
口コミ
会社の人や近所の人で家を建てた人や、これから建てる予定の人に聞く。
銀行
住宅ローン融資を行う銀行も提携不動産業者等から不動産情報を持っているのでチェックしましょう。
3.費用
限られた予算内で家と土地の配分を大雑把でも決めておくほうが計画的に動けると思います。
配分のバランスを決めておけば、後々に予算オーバー等の状態にならないで済むと思います。
自分の資金
人によってはつい少しでも良い土地を手に入れたいと考え、分不相応な高額な土地に目がいってしまう傾向があります。
ローン返済は大事なことなので、ここは冷静になって考えましょう。
逆に、少しでも安い土地をと考えて、地盤の弱い埋め立て地(水田跡地)や、海のすぐ近くなど災害に対するリスクの高い土地を選ばないようにしましょう。
自分の資金と希望条件に見合った土地を選びましょう。
自分の収入は?
ローンを組む人がほとんどですが、銀行は基本的に年収の8倍までは貸付してくれます。
ただコロナの影響で多くの方は収入減になっている場合も多いかと思います。
社会情勢も踏まえて、将来、確実に返済できるよう、必要最小限の金額を借りるようにしましょう。
地盤改良費
基礎を載せるために、いわゆる地中に杭を打つ、“地盤改良工事” の実施要否は、地盤のボーリング調査をしないと実際はわかりません。
土地が広く、建坪が広くなる場合にはもちろん費用も増えます。
事前に地盤が弱く、工事が必要である土地と知って購入した場合、標準工事より高額な費用は必須となります。
また反対に予想より補強が必要となり、当初の計画より多くの費用がかかる可能性もあります。
4.その他注意事項
土地購入にあたり付帯してくる注意事項です。
以下の内容が購入判断に大きく影響してくることもあります。
建築条件付きの土地
ハウスメーカーの分譲地の場合、基本的にはそのハウスメーカーの家を建てる事が必須条件になってきます。
土地はいいのに”建築条件付き”のせいで、希望のハウスメーカーの家が建てられないというケースもでてくるでしょう。
ただし、違約金を払えばこの条件を解除できるという裏技もあります。(ハウスメーカーによっても規約は異なりますが、土地の価格の2割程度が目安となるでしょう。)
契約
理不尽ですが、地盤調査を行う前に土地の売買契約を結ばなくてはなりません。
契約書をよく読んで、担当者に疑問点があれば必ず質問するようにしましょう。
手付け金を入れることになるはずです。
また”やっぱり購入を見送る”となった場合、契約を結んでしまうと、違約金が発生します。注意してください。
地域特有の注意事項
夏祭りなどの地域の祭りごとの際、その地区や自治会が伝統的に主催している場合など、その度に寄付金を数万円徴収されるという土地もあります。
事前にハウスメーカーや不動産屋に確認しておく必要があります。
ご近所さんについて
自分たちと同じような生活水準で、ライフスタイルの近い人が住んでいるかどうかは、住み心地に以外に影響してきます。
例えば子育て世代がたくさんいるエリアに老夫婦が家をたてて住み始めたら、子供の大声などで気分を害すかもしれません。
子育て世代が、年配世代が多い土地に引っ越した場合、子供を静かにさせなくてはと気を遣うかもしれません。
また最近は富裕層の外国籍の方も、日本で新築戸建てを購入されるかたが増えてきました。
思想や生活スタイルの違いから思わぬトラブルが起きないとも考えられません。隣にどんな人が住んでいるのかの確認くらいはしておきましょう。
まとめ
家を建てる上で最も重要度の高い要素である ”土地選び” について最後にまとめてみます。
大手ハウスメーカーは、家を売るために、大資本を武器に多くの土地を確保しています。
ハウスメーカー単独、もしくは共同で、ある程度の広さのエリアを分譲地として売り出すため、いわゆるスマートタウンを形成するケースが増えてきています。
ハウスメーカーは “良い条件の土地確保と土地提供ができるかどうか“ が、セールス向上と集客の強みになることを知っています。
家本体の性能をアピールするより、土地の価値を重視するユーザーには、ずっと楽に購入を決めてもらえるからです。
土地は家と違って資産価値が10年でゼロになるということもないので、家よりも土地の方が大事と思っている人は多いのではと、個人的には思っています。
また、折角、家を建てるなら、立地の良い場所で不便なく快適に暮らしたいと普通は思うのではないでしょうか?
予算の割り振りとして、土地代を削って、家本体を豪華仕様にするという考え方もありますが、配分バランスは、よくよく考えたほうがいいでしょう。
私の職場でも一時、新築の家を建てるブームがあったのですが、その中のある人は家を豪華仕様にして、ソーラー発電設備も15kW(通常よく目にするのは3kw台)の超大容量の仕様の家で、売電で家のローンを賄おうとしている人がいました。
この人は土地を海沿いの海抜の低い土地を安く購入していました。
リスクを負って土地の費用を抑える典型的なパターンですが、安い土地にはそれ相応の理由があります。
地盤の弱い土地であったり、海の近くに立地していて海抜がゼロメートルに近く、地震や津波等の災害時のリスクが高いことに該当することが多いです。
人によって考え方は様々ですが、土地という不動の財産を購入する場合、長期的にみるとリスクが高すぎると個人的には思います。
時間がたてばどんなに高級仕様の家でも価値はゼロとなります。
ソーラーの売電も遠い将来には見込めなくなる可能性もありますし、設備自体の寿命も正確にはわからず、故障時には修理費もかかるというリスクまであります。
土地まで安全性が低くて価値の低い土地であったら、万が一にも自然災害に遭遇してしまった際に、売却もできないでしょうし、人生のやり直しがききません。
家は長期的にみると、車と同じで、家の寿命まで長く住めばすむほど元がとれると思いますが、子供の代になったら恐らく建て替えが必要になるでしょう。
最初から地盤に問題のない土地であれば購入時に近い資産価値があり、建て替えの際にも、地盤改良費も低くてすむでしょうし、万が一、その土地を処分する際にも、そこそこの値で売却できると予想できます。
リスクヘッジのためにも土地自体の不動産としての価値を重要視すべきではないでしょうか。
私個人の意見としては、安心に快適に暮らしたい家なら、土地でリスクを背負うのは止めたほうがいいと思っています。
実際、資本の大きな大手のハウスメーカーほど、安全安心かつ利便性のよい一等地とセットで家の購入を勧めてきます。
また土地をたくさんキープしている大資本の大手ハウスメーカーほど会社の経営基盤がしっかりしています。
このため、中小の業者と比較すると、50-60年後に会社自体がなくなる可能性も低く、”家の保証がなくなってしまう” リスクも減るので、大手ハウスメーカーの分譲地は、街の不動産屋の持っている物件よりもこの点でメリットがあると言えるのではないでしょうか。
以上から、以下項目を参考に、あらためてハウスメーカー絞り込みのポイントを考えてみてください。
1. 立地が良く、安全、安心、便利な土地を提供できるか。
2. 買主の希望条件を満たせそうか。
(建物や庭や外構も含め、ユーザーのこだわりを満たすことができるか)
3. 営業担当者含め、会社として対応がきちんとしていそうか。
4. 会社自体が将来なくなる可能性はないか。
等です。
私の場合は最終的に、セキスイハイムとトヨタホームの2つのハウスメーカーに絞りました。
両メーカーとも家本体の安全性や性能に大きな差がなかったので、土地の立地面で良い条件が提示できたハウスメーカーを最終的に選択しました。
結果、セキスイハイムが、良い立地の土地をおさえていたので、ここに決めました。
落選したもう片方のハウスメーカーは、営業担当がとても頑張っていて、かつ誠意ある対応を示してくれていました。
そのため本音はこちらのハウスメーカーの方で契約してあげたいという気持ちが、かなりありました。
しかし”良い立地の土地”をこちらに提示できなかったので、双方にとって残念な結果となってしまいました。
結局のところ、土地選びは ” ユーザーが何に優先度を置くのか ” によります。
また“ 好条件の土地を提供ができるか否か “ が、ハウスメーカー決定のポイントとなりえるということです。
最終的に決めるのは自分です。土地は自分の本拠地になるのです。
いくら広い土地、安い土地がいいと考えて、辺境の地に家を建てたら日々生活をするだけでも大変な労力がかかるかもしれません。
もしそういう土地を購入して、家を建ててしまったら、最初は我慢できても、結局手放さなくてはならなくなるかもしれません。
人生に大きな影響がでてくる土地選びです。
決して安易に判断、妥協しないで、大いに悩んで決めましょう。